来院くださったサッカー選手といつものように、会話を通じてコンディショニングスタート。
Tad「今日はどんな感じ?」
選手「いや〜、先週やってもらってからヤバイっす」
Tad「何がヤバイの?」
選手「垂直跳びの滞空時間が半端なく長くなりましたね!体のポジションを立て直すのには助かるし、ボールは良く見えるようになったんだけど、ヘディングするタイミング・感覚が合わないくらい」
Tad「基本的にはいい事なんでしょ?」
選手「ハイ!あとは、感覚合わせるだけなんで」
外国人選手にも通用する高さ
現在はトロントを離れて活躍するこのサッカー選手。
数年前のサッカー選手としての伸び期に、最後に残った課題の一つが「外国人選手との高さの競り合い」でした。そこから考えると、なんとも頼もしい「ヤバイっす!」だったのです。
今年からは、チームの中心選手として結果が求められるポジションについています。以前は、唯一の日本人選手という事もありアグレッシブ感に欠けていた点もありました。しかし、日本人プレーヤーのグループディフェンスと全く違って、各国の選手がボールに向かってガツガツ来られるなかでプレーすることで、彼の意識も大きく変わった、ということです。
対等に外国人選手と競り合うように進化する一方、冷静に自身の体のサイズを考え、がむしゃらに当たり負けない体に鍛えあげるのでなく、より柔軟性をいかす・相手をかわすスタイルに磨きをかける、と見据えているので気負いもありません。
サイドキックが遅いという新たな課題
今回の訪問では、丁寧に対話をすることを通じて、新たに次の課題感を二人で確認しました。
外国人選手の中で結果を出すためには、特有の強いプレッシャーの中でもタイミングを見つけ、スピーディーにアクションを取らないといけない。具体的には、「サイドキックのモーションが遅い」が彼の感じているプレーの課題でした。
しばらく解決法を話し合っていると、彼から「ダンスが踊れるようにになりたい!」というリクエストが飛び出てきました。
ダンスと股関節とサッカーの密接な関係
一見脈絡がないダンスとサッカー。
どうしてダンスなのか、と早速質問。
返ってきた答えは、ピッチの内外でやたらと踊り出す外国人をじっと観察していたら、彼らのダンスは腰がスムーズに触れている一方、自分は上半身棒立ちなことに気づいたとのこと。
- 彼らとは、腰の柔軟性にギャップがあるのでは?
- 腰の硬さを改善すれば自分のプレーはもっと伸びるのでは?
という自己分析でした。
真髄をつく鋭い分析力だと唸りました。
ダンスを踊れるようになるとサイドキックが早くなる
最初聞いたときには、突拍子もないとも感じたリクエスト。
でも、そのリクエストに行きついた経緯を聞くことで、「サイドキックのモーションが遅い」という問題点の解決策が見つかりました。
【起きていること】
腰の動きが悪いので、股関節を開きボールを蹴る足の位置を、目的方向に合わせる事が出来ない。
股関節が動かないので、上半身を一緒に開いて足の位置を合わせている。結果として、2モーションになりサイドキックのモーションが遅くなる
【取ったアクション】
ダンスが踊れる腰にしたことで、下半身の動きにキレと幅が出ました。サイドキックは、そのモーションのスピードだけでなく、精度とパワーもアップさせることができたのです。
コンディショニングを自分で解釈する大切さ
このケースは、本人のコンディショニング意識の高さが、良い結果を生み出した好例です。
サッカーだけでなく、スポーツが上手くなるには、コーチが言う事を聞いているだけではダメで、自分なりの技術解釈が必要、というのが私の意見です。
コンディショニングにはスタンダードはなく、個人に合わせて対応するべきもの。得た情報をしっかり解釈し、自分の体を観察し、上手く自分流の進化させるのは、スマートでヤバイ作戦とですね。
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