長年、カナダ国立バレエ団のサポートに携わり、4人のプリンシパルダンサーを含む数多くのダンサー達と知り合いました。
私の立場は少し変わっていて、カナダ国立バレエ団の最期の砦的なポジションにあります。
バレエ団の最後の砦
どういう意味かと言うと、バレエ団の中には専属のセラピストが居るので、通常ダンサー達は、そこでお世話になります。しかし「長期間症状が改善しない」「ショーの前に絶体絶命な事が起こり、手に負えない」のような事態になったら、私の出番です。これは、バレエ団のセラピストとも暗黙の了解事項でもあります。
時間的に余裕のない中での対応と判断が要求される、責任が重いポジションです。
対応不可であれば、早く判断して決断してあげないと、代役ダンサーの手配などショー全体に影響を与えてしまいます。
絶対絶命の状況下で心がけること
このように正しい判断を、限られた時間ですることが要求されている状況で、私が心がけていることが5つあります。
- 正確なコンディションの把握
- 詳細なトリートメントプランの提示
- 最善/最悪シナリオの説明
- トリートメント結果の正直な報告
- できないことをを認める勇気を持つ
明日のショーに直接影響をあたえるかもしれない、絶体絶命の状況下だからこそ、ダンサーと彼らのコンディションに真剣に向き合う必要があります。セラピストからの一方通行のトリートメントではなく、ダンサーにも頑張ってもらう双方向のトリートメント。それを徹底することで、回復させる可能性が非常に低いコンディションの状況でも乗り切ってきました。
一流のバレエダンサーのサポートを通じて学んだこと
カナダ国立バレエ団という一流のダンサー達をサポートすることを通じ、「自分のテクニックに自惚れるな」と常に戒めてくれる経験を得ることができました。ダンサーとコンディショニングに向き合い、双方向のトリートメントをおこなうこと。25年以上トロントでマッサージセラピストとしてやってこれた礎となっています。
高いレベルでのパフォーマンスを保つ必要があるアスリートの方はもちろん、彼らのコンディションを預かる方にも、上記の5つのプリンシプルが参考になればと思います。