「長い筋肉」のストレッチ

長い筋肉という言葉を聞いたことありますか?

関節の最大可動域でも全然筋肉がストレッチされない柔らかい筋肉は、「長い筋肉」と呼ばれています。

ストレッチできない筋肉!?

ストレッチというのは、関節の動きに伴い筋肉が伸ばされてくる動き。最大可動域で伸びないのだから、ストレッチで「長い筋肉」を緩めるのは不可能なのです。

ですが、この筋肉をストレッチできないからと言って何もアクションをとらずにいると、慢性的な疲労・硬さから故障のもとになってしまうのです。これは、ふだん十分にストレッチに時間をかけている人(バレリーナなど)は特に要注意。
体がやわらかく、一見全身フニャフニャに見える体の持ち主は、自分の体に緊張が取れていない筋肉があるなんて思ってもみません。なので、結果として疲労した筋肉に気づかず大きな問題の原因となってしまうのです。

長い筋肉のコンディショニングの見極め方

このような危険な状況を防ぐためには、まず客観的な判断基準を持ってコンディションを見極める、つまり長い筋肉に柔軟性があるか、疲労がたまっていないか、を確かめることが重要です。

  1. 鏡の前で、自分の肩の位置を確認する
    • ポイントは、肩の高さ、左右のバランスがとれているか
  2. 床に寝て、両肩が床につくか?
  3. 床に両足を前に伸ばし座って、つま先で床をタッチできるか?
  4. 両足を揃えて立ったポジションからゆっくりと腰を下ろし、最後まで踵を上げずに下ろせるか?

もしも、この判断基準で、バランスが悪い・意図した動きができない場合、「長い筋肉」のコンディショニングが悪化していると言えるのです。

長い筋肉のコンディショニングの仕方

当然といえば当然なのですが、ストレッチすることができない「長い筋肉」なので、通常のストレッチでは伸ばすことができません。

一般的なストレッチでは力が全域に伝わらず、その効果がゼロになるという悩ましい部位です。ただ、上記のコンディショニングチェックでリスクがある場合、何もしないと、慢性的な疲労や、故障の原因になってしまいます。

「長い筋肉」対応としては、一般的なストレッチにアクションをもう1つ追加することで、不可能を可能にします。(2ポイントストレッチ)

「足首のすねの外側」を例に説明します。

【Tad式】2ポイントストレッチ

  1. すねの外側の長い筋肉の足首から20cm上の部分を親指で深く押さえて(1つ目のポイント)、そのポイントの上は無視。そのポイントから下の筋肉に集中してストレッチ効果を高めます
  2. 手で足首を掴んで床に向かって押していく(2つ目のポイント)
  3. 動きが止まったポイントで力を1分ホールド
  4. 再度、床に向かって押す

2つのポイントを意識し、すねの下半分の筋肉だけを集中して伸ばすこの動作を繰り返すと、慢性化した足首の硬さを簡単にかつ効率的に改善することができます。床に両足を前に伸ばして座って、つま先で床をタッチできる状態が目標です。

このように、「長い筋肉」のコンディショニングを整えるには、一般的なストレッチにもう一つポイントを追加することで、意識的に部位にアプローチをかけるのがおすすめです。

サッカー選手の膝を守る方法

サッカー選手など、走る系のアスリートに多く見られる、外側がごっつくなった太ももです。

4つの筋肉グループから構成されている大腿四頭筋は、トレーニングの方法のバランスが悪いと個々のバランスが悪くなります。

そのバランスが悪い状態の代表格が、走ったり筋トレする時に、膝を動かす方向が外側に向いている事です。バランス悪く太腿の筋肉が発達したものと思われます。

バランスが悪い太ももが与える悪影響

このバランスの悪いももの筋肉は、膝を曲げ伸ばしする時に膝にかかる負担をかける原因にもなってしまうので。

理想的な状態は、膝の内側・真ん中・外側を均等に動かし、膝にかかる負担が最小限に抑えられている状態です。しかし、膝の内側、真ん中、外側の太ももの筋肉のバランスが悪いと、関節の動く軸がぶれ、関節が擦れたりしてしまい、膝にリスクが知らぬ間に忍び寄ります。

サッカー選手が膝が痛いというときは、実はその原因はこのようにバランスが悪い太ももにあることが多いのです。

サッカー選手が膝を痛めない対策とは

一番大切なのは、走ったり筋トレする時に、膝を正しい動作方向を心がけ、「外側ガッチリの太もも」を作らない事です。

すでにガッチリ太ももになってしまった人には、膝の運びを正す大腿四頭筋のバランスを正すコンディショニングをお勧めします。

大腿四頭筋のバランスを正すコンディショニング

膝のお皿の上を内側から外側に3〜4か所、少しづつ間隔をあけて深く押して硬さを比較します(膝の上にイメージした横ライン上に触って比較することにより、他のポイントとの硬さの比較がしやすくなります。また、ライン上に触って行くことによりポイントを逃さずにアプローチ出来るメリットもあります)。

この部分は、筋肉だけでなく腱も含まれるので、揉むと言うよりは、2〜3分痛くない程度の圧を持続する様な刺激をする事により効果的に緩める事ができます。

これと関連して、腿の外側で腰から膝まで続くIT Bandという腱も、同様に2〜3分痛くない程度に圧を持続する刺激で緊張を柔らげる事が出来ます。

太もも前面の緊張がリリースされる感じや、外側にかたよっているももの形がキレイにバランスがとれている事を確認して下さい。

*補足:ももの外側の大きく長い腱IT Bandを緩めるのに効果的なポイントは、①膝の外側のすじ、②股関節(大腿骨頭)の上の辺り、③直立して腕を真っ直ぐ下ろして、中指の先端が触れる腿の外側の辺りです。

スケーターの伸びしろ

世界レベルで戦えるトップスケーターの仲間と多くの時間を過ごして気づいたことがあります。それは、トップスケーターは、同様に多くの優秀なスケーターに囲まれていることです。

試合の勝敗を分けるのは、トータルスコアではわずか1点未満の、わずかな違い。

着地の際のスケートエッジが氷に着く位置や角度の、わずかなずれ・ミスの少なさ、が勝負を分けるのです。

では、スケーターの伸びしろは何で決まるのでしょう?

この様なレベルの争いになると、基本的な技術の部分では大きな違いは出しにくく、いかに他の選手と差をつけるかという世界になってきます。

その伸びしろが潜んでいる可能性があるのが、主要関節まわりなのです。

トップレベルのスケーターになると、長年にわたる疲労の蓄積が、微妙に身体の動きを妨げている事が多いのです。そして厄介なことに、慢性的な疲れであるゆえに、スケーター自身に自覚がない事が多いのです。

伸びしろを決める、主要関節へのアプローチ

そのような場合は主要関節まわりをチェックすることをお勧めします。
具体的には

  • 体の大きな関節の、可動範囲をもう一度丁寧に確認
  • 関節回りを実際に触って、痛みの有無を確認
  • 関節回りを実際に触って、疲れる感じる場所を正確に確認

などがおすすめのチェック方法です。

スケーターの伸びしろは身近なところに

このように基本である主要関節まわりを丁寧に確認し、問題点を改善する事で、身体の動きに余裕が生まれ、同じジャンプでもそのクオリティが格段に上がるのです。

伸びしろを見つけるコツは、技術を磨くだけでなく、身体の状態・体の構造意識を向けること、です。伸びしろはわりと自分の近くに、そして簡単に見つかるところに潜んでいるのです。