前回は、私のコンディショニングに対する基本的なアプローチを話させていただきました。今回はそのうえで、いかに自分だけでなく、アスリート本人や、サポートする方々にも理解を深めてもらったのかの話をします。
マッサージセラピストの限界
このような修羅場をたくさん経験したことで、マッサージセラピストの自分が何ができるのか、をより考えるようになりました。
はじめは僕も、色々勉強したりして、自分が頑張んなくちゃいけないなっていう方向に行きました。だけどそこには限界があることに気がついたんです。
例えば、オリンピックの直前に怪我を防止するにはどうしたらいいか。考えた結論は「自分の力だけでは足りない」ということ。
自分の力だけでは足りないということをもう少し説明すると、マッサージセラピストである僕の仕事の完成形・最終的に達成したいゴールを考えると、自分一人では成り立たないということなんです。。
自分以外だと、患者さん自身が理解をしてアクションをとってくれることが大切です。
受け入れる側である患者さんが、僕のやり方や考えていることを十分理解する。
そして、やり方を取り入れて、自分でやってもらう。
そこまでやったコンディショニングでないと、オリンピックの前に怪我を防止する、というようなことは実現できないんです。逆に言うと、患者さん本人も理解してくれた上で一緒に、何年も前から逆算してコンディショニングを整えないと、怪我をしてしまうということです。
アスリートとのコミュニケーション
そこに気がついてからは、僕は針を刺したり、マッサージをすることだけでなく、患者さんにちゃんと響く形で僕の持ってる知識を伝えるこういう作業を大切にするようになりました。
伝えるということも簡単ではないんです。人によってバックグランドは違いますから。
同じ腰が痛いという症状でも、毎日バレエで10時間練習をしている方が腰が痛くなった場合と、小さい赤ちゃんを抱っこしていて腰が痛くなったママの場合では、バックグラウンドが違いますよね。
また、その人が使える時間が使える時間も変わります。
痛くなった環境の違い、対処に使える時間などの違い、を理解したうえで、出来る限りその人にあったコミュニケーション・対応をすることを通じて、僕のやり方・考えていること・知識を伝えていきます。
僕自身・アスリート以外で、大きな影響を与えるのは、アスリートを周りでサポートする方です。
結果を出すことが求められるアスリートにとって、サポートする方が優秀かで結果に違いがあるので、今の時代です。
アスリートは結果を出すことが求められる、ある意味わかりやすい世界です。結果が出るというのは、
周囲のコンディショニングについての理解
この方々はアスリートを多岐にわたってサポートする必要があります。
例えば、メディアコントロール。人気選手になると、試合の会場に行っても、バスが取り囲まれてホテルからも出れない、ムービースターみたいな感じなっちゃう。17歳18歳くらいの子たちにこういうこと起きるので、悪い意味で勘違いをしないようにケアをしないといけない。
このようなサポートをする周りの方々にも、コンディショニングについての理解を深めてもらうことが理想です。
大切なことは双方向であること
でも、最終的にはアスリート本人に情報をちゃんと伝えて、自分でやってもらわないといけないんですよね。
アスリートとのコミュニケーションで大切なことは、一方通行の情報でなく、双方向のコミュニケーションであること。時間もかかりますし、僕の引き出しもたくさんないといけないから大変です。ですが、僕が25年やってる中で、自分がコンディショニングを担当していた人の中から金メダリストが誕生するような結果につながったのは、この双方向のコミュニケーションを通じて、本人にも腹落ちしてもらいアクションを取ってもらったこと、が根本にあるのではないかなと思います。