肩こりを根絶するストレッチ

多くの人が日常的にかかえる体の悩みの代表である、肩こり。

肩こりの直接的な原因の一つが「肩甲挙筋」という筋肉です。下のイラストにあるように、肩こりに大きな影響を与える筋肉にしては、わりと小さくて細い筋肉なのです。

肩甲骨の上角から、首の骨の横についていて、肩甲骨を引き上げる役目をはたしています。デスクワークなどで肩のポジションが長時間上がっていると、この筋肉が慢性的に萎縮して肩凝りが発生しやすくなります。

肩こりの原因、肩甲挙筋へのストレッチとは?

「この筋肉のあたりを揉んでもらえば気持ちはいいし、効くのでは」と思いますが、本質的な問題解消にはなりません。

なぜならば、肩甲挙筋が萎縮する原因は、この筋肉だけでなく大菱形筋、小菱形筋など、同じような働きをする筋肉グループが関係するからです。この筋肉グループが肩甲骨を上に引っ張り、肩甲挙筋が萎縮した状態を固定化している状態を解決するには、やはり筋肉のグループにセットとしてアプローチする必要があるのです。

【Tad式アプローチ】肩こりの根絶のためのストレッチ

まず肩甲骨を大きく動かすことが大事です。それによって、肩甲骨と背骨のあいだを繋げるグループをまとめて緩めます。

動かす方向は三つです。

1)背骨方向+逆方向

腕を背中側で組んで肩甲骨の内側同士をくっつける動き。

その反対に、腕を体の前で組んで両肩甲骨を外側に引っ張る。

2)首方向+逆方向

手を組んで上に伸ばして肩甲骨を引き上げる動き。

手を組んで下に伸ばして肩甲骨を下げる動き。

3) 大きく回転する。

両手を肩の先端においてひじの先出大きな円を描く。

【Tad式アプローチ】ワンランク上の肩こりコンディショニング

肩周りのストレッチをしても取れない緊張がある場合、肩の部分ではなく、肩甲骨の内側の緊張を緩めることが重要です。

背中で手を組み腕を伸ばした時に肩甲骨がボコッと浮き出てくれば合格ですが、多くの人は一部分もしくは全体的に肩甲骨の内側にラインが浮き出ません。

背中で手を組み腕を伸ばした時に、肩甲骨がボコッと浮き出てくれば合格。ですが、多くの人は肩甲骨のラインが浮き上がらないのです(理想は肩甲骨全体の内側に全体的にラインが浮き上がる状態です)

浮き出ない部分=頑固な肩凝りの根本原因。第三者にマッサージしてもらったりして、肩甲骨内側にピンポイントな改善を行う事が、ワンランク上ののコンディショニングに繋がります。

「肩がこる」をなくすために

この様なアプロー地で肩甲骨を緩め、360度自由に動かせる状態にする&キープすれば、肩凝りとなる筋肉の緊張が慢性化する事はなくなります。すなわち肩がこることがなくなる、のです。

肩甲骨のコンディショニングは肩凝り根絶のキーポイント。

肩が凝っているところを揉んでもらって一時的に症状をごまかすのでなく、肩凝りを引き起こす原因である肩甲骨まわりの筋肉グループのコンディショニングをマスターすれば、肩凝りを根絶することは可能です。

体のコンディションの松竹梅 コース

体のコンディショニング・ストレッチといっても体には個人差があるので、自分の体や目的に合った方法をとるのが大切です。

いくらストレッチの本を買ってもなかなか自分にぴったりはまらない。そのようなときは、必ずしも本の内容が悪いのでは無く、私たちの体のコンディションが一人一人異なることが理由であることが多いのです。

自分が目指すのは、松竹梅のどのコースか?

自分が松竹梅コースの、どこを目指すかを決定する必要があります。

【Tad式】松コース

  • 十分に管理された体で、さらなる高み・少しでも伸び代を開拓する。
  • 将来的に想定される故障を未然に防ぐ目的で将棋の様に数十手先を見据えたコンディショニングする。
  • 現状足りない部分を補う場所や方法を、本人の体や環境を含めたバックグラウンドから探り出して対策するレベル。(コンディショニング方法を指導するレベルは越えている前提)
  • 本人が気がついていない問題点にも対応するアプローチをとる。

【Tad式】竹コース

  • 体重をかけてストレッチするなど、負荷を加えたコンディショニングで機能向上を目指す。
  • 関節の最大可動域まで丁寧にストレッチすると筋肉だけでなく、腱を緩める効果も見込まれます。
  • しかし、負荷をかける方向や、場所、強さを間違えると、効果が見込まれず怪我の原因となるので、指導された方法を自分の体に合った方法に調節するなど、細かな対策が必要です。

【Tad式】梅コース

  • あまり強く刺激せず、ウォーミングアップ程度のコンディショニング。
  • 関節に負荷をかけずに、自分で足首手首をクルクルする程度。
  • 怪我の危険も少なく万人向け。
  • 現状維持を目的とします。反面、多くの効果は期待薄です。

アプローチの順番

体の状態が伴わずにいきなり松コースをスタートしても危険が増すだけで意味ありません。

焦らずに梅コースからスタートすることも大切。

長年コンディショニングをしているのに一向に効果の得られない場合も、問題点を洗い出す意味で梅コースから再スタートするのも良い考えです。

基本的に関節等に異常がない限り、コンディショニングしているのに少なくとも柔軟性が長年改善されないのは方法が間違ってる可能性が高いからです。

National Ballet of Canada(カナダ国立バレエ団)

長年、カナダ国立バレエ団のサポートに携わり、4人のプリンシパルダンサーを含む数多くのダンサー達と知り合いました。

私の立場は少し変わっていて、カナダ国立バレエ団の最期の砦的なポジションにあります。

Principal Dancer Skylor Campbell

バレエ団の最後の砦

どういう意味かと言うと、バレエ団の中には専属のセラピストが居るので、通常ダンサー達は、そこでお世話になります。しかし「長期間症状が改善しない」「ショーの前に絶体絶命な事が起こり、手に負えない」のような事態になったら、私の出番です。これは、バレエ団のセラピストとも暗黙の了解事項でもあります。

時間的に余裕のない中での対応と判断が要求される、責任が重いポジションです。

対応不可であれば、早く判断して決断してあげないと、代役ダンサーの手配などショー全体に影響を与えてしまいます。

Principal Dancer Harrison James Wynn

絶対絶命の状況下で心がけること

このように正しい判断を、限られた時間ですることが要求されている状況で、私が心がけていることが5つあります。

  1. 正確なコンディションの把握
  2. 詳細なトリートメントプランの提示
  3. 最善/最悪シナリオの説明
  4. トリートメント結果の正直な報告
  5. できないことをを認める勇気を持つ

明日のショーに直接影響をあたえるかもしれない、絶体絶命の状況下だからこそ、ダンサーと彼らのコンディションに真剣に向き合う必要があります。セラピストからの一方通行のトリートメントではなく、ダンサーにも頑張ってもらう双方向のトリートメント。それを徹底することで、回復させる可能性が非常に低いコンディションの状況でも乗り切ってきました。

First soloist Emma Hawes

一流のバレエダンサーのサポートを通じて学んだこと

カナダ国立バレエ団という一流のダンサー達をサポートすることを通じ、「自分のテクニックに自惚れるな」と常に戒めてくれる経験を得ることができました。ダンサーとコンディショニングに向き合い、双方向のトリートメントをおこなうこと。25年以上トロントでマッサージセラピストとしてやってこれた礎となっています。

高いレベルでのパフォーマンスを保つ必要があるアスリートの方はもちろん、彼らのコンディションを預かる方にも、上記の5つのプリンシプルが参考になればと思います。

Mr. Long leg Giorgio Galli


肘関節のストレッチ

様々なスポーツ、日常の生活で必ず使う、肘(ひじ)。使う頻度が高い部位だからこそ、トラブル・悩みも多い箇所です。

肘関節の、基本的な動き

肘関節の動きは次の4つがあります。

1)ひじを曲げる

2)ひじを伸ばす

3)ひじを内側に捻る

4)ひじを外側に捻る

4つの動きがあるということは

=少なくとも4つの筋肉がひじを動かしている

=ひじのストレッチは4種類必要

というのが基本的なアプローチです。

ひじ関節をストレッチするときに、意識する筋肉

では、実際にストレッチするときには、どの筋肉を意識するといいのでしょう? さきほどご紹介した4つの動きごとに説明します。

1)ひじを曲げるとき=主要な筋肉は、ポパイの上腕二頭筋。

2)ひじを伸ばすとき=主要な筋肉は、上腕の外側に付く上腕三頭筋*。

3)ひじ内側に捻るとき=主要な筋肉は、回内筋、腕橈骨筋

4)ひじ外側に捻るとき=主要な筋肉は、ひじを曲げる時に使う上腕二頭筋と回外筋

これらが、ひじ関節をストレッチするときの、ターゲットとなる筋肉です。

*二頭筋、三頭筋の呼び名の違いは筋肉が骨にくっつく部分が2箇所か3箇所かの違いです。

ここに出てきた上腕二頭筋、上腕三頭筋、回内筋、回外筋、腕橈骨筋

といった筋肉をトータルでストレッチする必要があります。

実際にひじ関節に確実に効くストレッチとは?

ひじ関節のストレッチ方法はグーグルで検索すると、数えきれないほどでてきます。マッサージセラピストとしての私からアドバイスは、トータルでストレッチすること。

本来4つの種類をやらなくてはいけないストレッチを、トータルでアプローチすることで、確実に、簡単に、そして効率的にコンディショニング出来るワンランク上のアイディアです。

【Tad式アプローチ】ひじ横断コンディショニング

トータルでひじ関節にアプローチするやり方自体は簡単です。

  • ひじの上と下の部分で一本のラインをイメージし、それに沿って奥を探りながら押していきます。
  • 所々に筋張った物に当たるので、その筋を逃さずに1分程圧を持続します。
  • ひじ周りの奥に感じる筋張った物こそが、ひじを動かしている筋肉のくっついている部分なのです。なので、この根元を緩めれば筋肉自体をストレッチしなくても自然に筋肉も緩む可能性が高いのです。
  • この動作を、ひじの上と下の2ラインに対して、繰り返し行います。

肘の関節は慢性疲労が溜まっているのが見逃されがちです。筋肉の根元にアプローチすることは、慢性疲労を改善する点からも非常に効率的と言えます。

ひじ関節と骨の構造の問題

ひじ関節 に関係する骨は3つあります。

1)ひじの上の上腕骨

2)ひじの下尺骨

3)ひじの下橈骨

1)と2)+3)の骨でひじの関節を構成されてするので、ひじには2つの関節面が存在することになります。

ひじに炎症がおきたり、関節内部がすり減るなどの深刻な問題が発生している場合、ひじ関節周りの緊張に気づかずに長期間放置し、この2つの関節面のテンションが上がって擦れていることが原因であることが多いです。

このようなシナリオを避ける為には、「痛い痛くないといった感覚的な判断」ではなく、客観的判断基準と絶対基準を持ってコンディショニングを行う事が大切です。

「長い筋肉」のストレッチ

長い筋肉という言葉を聞いたことありますか?

関節の最大可動域でも全然筋肉がストレッチされない柔らかい筋肉は、「長い筋肉」と呼ばれています。

ストレッチできない筋肉!?

ストレッチというのは、関節の動きに伴い筋肉が伸ばされてくる動き。最大可動域で伸びないのだから、ストレッチで「長い筋肉」を緩めるのは不可能なのです。

ですが、この筋肉をストレッチできないからと言って何もアクションをとらずにいると、慢性的な疲労・硬さから故障のもとになってしまうのです。これは、ふだん十分にストレッチに時間をかけている人(バレリーナなど)は特に要注意。
体がやわらかく、一見全身フニャフニャに見える体の持ち主は、自分の体に緊張が取れていない筋肉があるなんて思ってもみません。なので、結果として疲労した筋肉に気づかず大きな問題の原因となってしまうのです。

長い筋肉のコンディショニングの見極め方

このような危険な状況を防ぐためには、まず客観的な判断基準を持ってコンディションを見極める、つまり長い筋肉に柔軟性があるか、疲労がたまっていないか、を確かめることが重要です。

  1. 鏡の前で、自分の肩の位置を確認する
    • ポイントは、肩の高さ、左右のバランスがとれているか
  2. 床に寝て、両肩が床につくか?
  3. 床に両足を前に伸ばし座って、つま先で床をタッチできるか?
  4. 両足を揃えて立ったポジションからゆっくりと腰を下ろし、最後まで踵を上げずに下ろせるか?

もしも、この判断基準で、バランスが悪い・意図した動きができない場合、「長い筋肉」のコンディショニングが悪化していると言えるのです。

長い筋肉のコンディショニングの仕方

当然といえば当然なのですが、ストレッチすることができない「長い筋肉」なので、通常のストレッチでは伸ばすことができません。

一般的なストレッチでは力が全域に伝わらず、その効果がゼロになるという悩ましい部位です。ただ、上記のコンディショニングチェックでリスクがある場合、何もしないと、慢性的な疲労や、故障の原因になってしまいます。

「長い筋肉」対応としては、一般的なストレッチにアクションをもう1つ追加することで、不可能を可能にします。(2ポイントストレッチ)

「足首のすねの外側」を例に説明します。

【Tad式】2ポイントストレッチ

  1. すねの外側の長い筋肉の足首から20cm上の部分を親指で深く押さえて(1つ目のポイント)、そのポイントの上は無視。そのポイントから下の筋肉に集中してストレッチ効果を高めます
  2. 手で足首を掴んで床に向かって押していく(2つ目のポイント)
  3. 動きが止まったポイントで力を1分ホールド
  4. 再度、床に向かって押す

2つのポイントを意識し、すねの下半分の筋肉だけを集中して伸ばすこの動作を繰り返すと、慢性化した足首の硬さを簡単にかつ効率的に改善することができます。床に両足を前に伸ばして座って、つま先で床をタッチできる状態が目標です。

このように、「長い筋肉」のコンディショニングを整えるには、一般的なストレッチにもう一つポイントを追加することで、意識的に部位にアプローチをかけるのがおすすめです。

サッカー選手の膝を守る方法

サッカー選手など、走る系のアスリートに多く見られる、外側がごっつくなった太ももです。

4つの筋肉グループから構成されている大腿四頭筋は、トレーニングの方法のバランスが悪いと個々のバランスが悪くなります。

そのバランスが悪い状態の代表格が、走ったり筋トレする時に、膝を動かす方向が外側に向いている事です。バランス悪く太腿の筋肉が発達したものと思われます。

バランスが悪い太ももが与える悪影響

このバランスの悪いももの筋肉は、膝を曲げ伸ばしする時に膝にかかる負担をかける原因にもなってしまうので。

理想的な状態は、膝の内側・真ん中・外側を均等に動かし、膝にかかる負担が最小限に抑えられている状態です。しかし、膝の内側、真ん中、外側の太ももの筋肉のバランスが悪いと、関節の動く軸がぶれ、関節が擦れたりしてしまい、膝にリスクが知らぬ間に忍び寄ります。

サッカー選手が膝が痛いというときは、実はその原因はこのようにバランスが悪い太ももにあることが多いのです。

サッカー選手が膝を痛めない対策とは

一番大切なのは、走ったり筋トレする時に、膝を正しい動作方向を心がけ、「外側ガッチリの太もも」を作らない事です。

すでにガッチリ太ももになってしまった人には、膝の運びを正す大腿四頭筋のバランスを正すコンディショニングをお勧めします。

大腿四頭筋のバランスを正すコンディショニング

膝のお皿の上を内側から外側に3〜4か所、少しづつ間隔をあけて深く押して硬さを比較します(膝の上にイメージした横ライン上に触って比較することにより、他のポイントとの硬さの比較がしやすくなります。また、ライン上に触って行くことによりポイントを逃さずにアプローチ出来るメリットもあります)。

この部分は、筋肉だけでなく腱も含まれるので、揉むと言うよりは、2〜3分痛くない程度の圧を持続する様な刺激をする事により効果的に緩める事ができます。

これと関連して、腿の外側で腰から膝まで続くIT Bandという腱も、同様に2〜3分痛くない程度に圧を持続する刺激で緊張を柔らげる事が出来ます。

太もも前面の緊張がリリースされる感じや、外側にかたよっているももの形がキレイにバランスがとれている事を確認して下さい。

*補足:ももの外側の大きく長い腱IT Bandを緩めるのに効果的なポイントは、①膝の外側のすじ、②股関節(大腿骨頭)の上の辺り、③直立して腕を真っ直ぐ下ろして、中指の先端が触れる腿の外側の辺りです。

スケーターの伸びしろ

世界レベルで戦えるトップスケーターの仲間と多くの時間を過ごして気づいたことがあります。それは、トップスケーターは、同様に多くの優秀なスケーターに囲まれていることです。

試合の勝敗を分けるのは、トータルスコアではわずか1点未満の、わずかな違い。

着地の際のスケートエッジが氷に着く位置や角度の、わずかなずれ・ミスの少なさ、が勝負を分けるのです。

では、スケーターの伸びしろは何で決まるのでしょう?

この様なレベルの争いになると、基本的な技術の部分では大きな違いは出しにくく、いかに他の選手と差をつけるかという世界になってきます。

その伸びしろが潜んでいる可能性があるのが、主要関節まわりなのです。

トップレベルのスケーターになると、長年にわたる疲労の蓄積が、微妙に身体の動きを妨げている事が多いのです。そして厄介なことに、慢性的な疲れであるゆえに、スケーター自身に自覚がない事が多いのです。

伸びしろを決める、主要関節へのアプローチ

そのような場合は主要関節まわりをチェックすることをお勧めします。
具体的には

  • 体の大きな関節の、可動範囲をもう一度丁寧に確認
  • 関節回りを実際に触って、痛みの有無を確認
  • 関節回りを実際に触って、疲れる感じる場所を正確に確認

などがおすすめのチェック方法です。

スケーターの伸びしろは身近なところに

このように基本である主要関節まわりを丁寧に確認し、問題点を改善する事で、身体の動きに余裕が生まれ、同じジャンプでもそのクオリティが格段に上がるのです。

伸びしろを見つけるコツは、技術を磨くだけでなく、身体の状態・体の構造意識を向けること、です。伸びしろはわりと自分の近くに、そして簡単に見つかるところに潜んでいるのです。